かつてロマネ・コンティのオーナーであったデュヴォー・ブロシェ家の所有地の一部が、ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドール。
1964年、投資家たちにより再構築され、その時に醸造長となったのがジェラール・ポテルであった。
やがて、ポテルが株式の半分を取得し、もう半分をオーストラリアの投資家たちが所有していたが、1997年にポテルが急死。
ドメーヌは売りに出され、これを購入したのが現オーナーのパトリック・ランダンジェである。
彼は医療機械、とくに整形外科のビジネスで成功した人物だがヴォーヌ・ロマネに別荘をもっており、いつかは畑を買い、この別荘をドメーヌにしたいと夢想していた。そんな折、プス・ドール売却の話を耳にしたという。
手に入れるや否や、200万〜300万ユーロの資金を投じて、醸造施設や発酵用の木桶、他の設備も一新。1999年に完成した醸造施設は6層構造になっており、収穫から醸造、樽熟成、瓶詰めまで、ポンプを一切使わず重力でブドウ果汁やワインが流れる仕組みになっている。
ランダンジェが投資したのは設備だけに止まらず、ブドウ畑の拡張も盛んに行われている。
1998年にコルトン・クロ・デュ・ロワ(1.45ha)とコルトン・ブレッサンド(0.48ha)を手に入れ、2004年にピュリニー・モンラッシェ1級カイユレ(0.73ha)。
そして2008年にはシャンボール・ミュジニーのドメーヌ・モワンヌ・ユドロを買い取り、村名シャンボール・ミュジニー(1.41ha)、1級のグロゼイユ(0.52ha)、フースロット(0.42ha)、シャルム(0.19ha)、レ・ザムルーズ(0.20ha)、そして特級ボンヌ・マール(0.17ha)をラインナップに収めた。
その代わり、2009年にサントネイ1級のグラヴィエールは売却。
ブドウ栽培はすべてビオロジック農法がとられていたが、2014年に栽培責任者としてユベール・ロシニョール氏を迎え、ビオディナミへの転換がスタート。近いうちに認証がとれる予定。
赤ワインの醸造では木桶とステンレスタンクを併用し、7日間の低温マセレーションの後、日に2回のピジャージュをしながら長いキュヴェゾンを施す。樽熟成は1級で1/3、特級で40%前後。トータルで15ヶ月間。
白ワインは圧搾後、24時間のデブルバージュを経て、樽発酵、樽熟成。ただしただの小樽ではなく350リットルの中樽を用いる。新樽比率は50%。
ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールのワインはピュアで洗練されている。 果実味、酸、そしてタンニン、それぞれの要素が高次元でバランスよくまとまり、若いうちから十分に楽しめ、熟成にも耐え得るタイプだ。 とくにブルゴーニュ大公家が所有し、その後フランス王家のものとなったとされる、このドメーヌのモノポール「クロ・ド・ラ・ブス・ドール」は、力強さとエレガンスのせめぎ合いが面白いワインである。
2018年、パトリック・ランダンジェの息子 ブノワ・ランダンジェが当主に就任。エンジニアのバックグラウンドを持ちながら、ワインにも関わり、2014から2017ヴィンテージまで父と共に醸造に携わった。
2018年から遂に彼ひとりで醸造したヴィンテージとなるが、ドメーヌが所有するその卓越したテロワールをもつ区画から最高のワインを造るべく、ブノワは“正確さ”を常に追求する。
ビオディナミへの転換の他、醸造ではアンフォラを採用するなど、ドメーヌはさらなる発展を続けている。新当主を迎え、今後の進化に目が離せない。